■2019年9月 モータージャーナル大試乗会②

 メルセデスAMG G63

 森慶太FMOと沢村慎太朗FMOが呉越同舟で試乗しました


メルセデスAMG G63 写真01

取材班の3人がそれぞれスマホ(iPhone×2+Nexus5x)にて撮影しましたものをまとめてみましたところ、今回、いわゆる外観、エクステリアの画像がやや不足していることが判明いたしました。すいません。でその外観系の画像のなかで、いちばん太陽光の当たりかたがヨカッタのがこれでございました。G63 AMG。(森)

 

第二回のFMO大試乗会は去年に切り替わったGクラス。まだ目が万全じゃないおれは今回は運転せずレポーター役。ゆえに森さんのリクエストを優先してこれが採用されました。NATO制式採用クロスカントリー車輛の民生版で1979年に始まったときのコードはW460(短軸距)&W461(長軸距)。89年に上屋を建て替えてW463に。でも全面新設計した現行もコードはW463。ワケわからん。そーゆうのやめてほしい。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真02

旧型Gクラスと較べた際の見た目上の大きな違いとして、ひとつには真後ろから眺めたときの縦横比というのがあります。すなわち、旧型は縦長っぽい。それが新型=現行ではだいぶフツーに。ちなみに新型、全幅はスペック上1985mmとなっております。それに対して全高は1975mm。じゃあ旧G63はというと、全幅×全高が1860mm×1950mm。ということで、やっぱりタテヨコ比は縦長でした。(森)

 

全幅は初期型だと1760mmだったのが、上屋建て替えてオバフェン延ばして1.8m台に。先代の最終型は1860mmでした。そして現行では1985mmに。レンジローバーと一緒です。ただし先代比5mm増の背丈はあちらより10cm以上高くなってます。そのせいか後ろから見ると一斗缶にタイヤがついてるような独特の印象はあまり変わっていません。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真03

新型は旧型比、全長で+90mm、全幅で+105mm、全高で+25mm、ホイールベースで+40mm。つまり全体にデカいということです。ただし重量は旧型比少し軽くなって2590kg→2530kg。でもといいますか、新旧G63の寸法関係でいちばん違いがデカいのはトレッドでしょう。すなわち、旧G63の前後1500mmに対して新G63は前後1655mm。つまり旧型比、10%よりもっとワイドになっております。(森)

 

現行型の上屋は軽量化を狙ってドアやボンネット等の所謂フタ物をアルミ材に置換している由。同じ4.0V8ツインターボ搭載モデルで比べると、先代最終型G550の2560kgに対して現行は2530kg。たいして軽くなってねえじゃんと突っ込むのは早計。上面投影面積は9%ほど増えていて、それとの比率だと1割ほど軽くなってます。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真04

たとえばの話、昨日まで身長150cmだった人が今日会ったら身長165.5cmになってたら、ビックリしますよね。もう別人。新旧Gクラス、外観をボーッと眺めてればどっちもだいたい同じようにGクラスですが、要はそれっくらい大きく違っているということ、でもあります。なお、画像は返却前の満タン&洗車終了後の図。雨が降ってたので、外装関係の拭き上げ関係はホイールのみにて。(森)

 

広報車は沈んだ赤メタリック。色調は渋いのですが、この面積で迫られると存在感は強い。ちなみにこれヒヤシンスレッドという色名とのこと。球根を水栽培した小学校のときの記憶ではヒヤシンスの花はは薄青紫だったはず。とおもって後で調べたら品種改良で赤も橙も黄も何でもあるのね。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真05

うっかりしたことに今回ダッシュボード全景を誰も撮影しておりませんで、しかたなく、この画像を(すいません)。液晶ディスプレイに出てきたやつです。なお、ハンドルのロックtoロックの半分は約1.33回転。×2で2.66。最小回転半径は6.3m。ホイールベース等の数値もアレして「車の数学」のページでやってみましたところ、操舵系の減速比は15.16対1と出ました。オフロード車両としてはややクイック、でしょうかね。(森)

 

助手席の際まで伸びた横長の液晶パネルをダッシュにどんと立てる最近のベンツお約束のインパネ。ダッシュの縁やドア内張りにはやはり電飾が埋め込まれる。その色調は……依然として例のアレです。助手席側の正面に見える黒いのは捉まり棒。安定傾斜角35°を誇るからには必須の装備でしょう。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真06

目の前の計器盤はこんな感じ。液晶ディスプレイでほかにもいろいろ出せるかもしれませんが、俺はイジりませんでした。気になる燃費は、高速道6割山坂道2割市街地2割な感じのルートをごくフツーに386.9kmで満タンにしたら54.73リッター。割り算すると7.1km/L弱。JC08モードは6.6km/Lだから……勝った(笑)。なお新型、タンク容量100リッター。旧型比だいぶデカい……と思ったら旧型も96リッターありました。(森)

 

ドライバーの正面には古式ゆかしい二眼メーターが描画される。この4.0V8は乗用車のみならずSLやAMG GTにも使うから結構なロングストローク(φ83×92mm)なのに高回転までブン廻す設計だったのだが、Gクラス用でもリミット7000rpm。そのときのピストン平均速度は21.5mとかなり速い。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真07

メルセデス・ベンツなので、シート調整用のスイッチ群はこのように。つまり、シート本体ではなくドアの側についております。車両本体価格2076万円(税込みオプション抜き)のクルマなので、シートヒーターがついてるのはアタリマエ。シートベンチレーターもついている……のも、アタリマエですかね。オプション代は、レザー関係が約80万円とヒヤシンスレッドのペイントが22万4000円。合計で2247万1200円。(森)

 

ドア内張りに設けられるシート調整スイッチ。動化したいところが一発で視認できるじゃん!と昔は感動したものですが、今となっては欠点が見えてきます。上腕を宙に浮かして操作しなけりゃいけないので、座面横についている奴に比べて操作しにくいのです。言い添えるとランバーサポートは無しみたい。んなもんなくても設計は万全だぜってことなのでしょうか。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真08

前、中央、後ろと合計3つあるディファレンシャルをロック/アンロックするためのスイッチ×3があるのがおわかりですか。で、よく見るとそれぞれにアラビア数字が。要は操作のインストラクションで、オフロード等で必要に応じてロックする際は1センター→2リア→3フロントの順にデフロックをやってくださいと(アンロックの順番はリバースで3→2→1)。このへん、今回の試乗中はいっぺんもさわっておりません。(森)

 

ご存じGクラスはNATO軍に制式採用された軍用車輛が出自です。で民生版を作ってみたら何故か世界中で人気が出ちまって延命に次ぐ延命。で、ついに新設計に生まれ変わった。と聞けば、見た目だけ踏襲した中身は軟弱SUVかと疑うひと多かろう。いいやこちとらまだ硬派だぜと主張するのが3つのデフをロックするこれらスイッチ。ついでに言えば、車体構造も依然としてラダー式鋼製フレームに上屋が乗る古式ゆかしいそれです。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真09

ゲレンデワーゲンとはいえ最近の高価格車なので、こういうのもフツーについております。パームレストダイヤルとその他いろいろ。試乗中によくやったのは、ダンパーの制御モードの切り替え(コンフォートとスポーツとスポーツ+)。ダンパーのアイコンが印刷されてるスイッチ、ありますね。ほかにも、マニュアル変速モードのスイッチとか排気音の切り替えスイッチとか。(森)

 

「もうディスコン」「もうやめる」と匂わせつつ21世紀まで延命させちゃって老舗ハードロックバンドみたいだったGクラス。その途中から木目板だのの加飾で乗用車風にしたがってましたが、蔽い隠せぬ軍用車起原のハードコアな香りと激しくミスマッチでした。しかし生まれ変わった現行では今様内装に違和感はありません。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真10

シートのかけ心地は、基本的にはヨカッタです。クッションがギュッと締まってて、あと骨盤の支持もちゃんとして。ひとつアレだったのは、横Gがかかるとサイドサポートがグイイッと自動で盛り上がるというか立ち上がるというかのシカケ。ITダイヤルを駆使してそのシカケをディアクティベートできたのは、俺的にはけっこう自分を褒めたいところだったりします。(森)

 

シートはW220系Sクラス以来ベンツでお馴染みになったあれ。すなわち、表皮直下のワディング材くらいしか柔らかさを感じるところがなくて、その下の部分はガッチリ硬い感じのシートです。坐ってる間は「ちっと硬てえなあ」「どうも尻や背中に馴染まねえなあ」と思っているのに、降りると身体のどっこも痛くなってない。同じAMGでもC63なんかはバフッと柔らかいのですが。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真11

運転席のドアを開けたところにこのバッジが。Schöckl というのはこのクルマの生地でありますところのオーストリアはグラーツのほうにある山の名前で、要はアレです。ジープにおけるルビコントレイルと同じような。タフな山道というかオフロードでちゃんと走行テストをやってバッチリ大丈夫なものになってることが証明されてますよと。(森)。

 

このバッジでも軟弱野郎じゃねえぜを主張します。グラーツにあるオフロードテストコースで実験してるぜとイキッてるわけです。ちなみに車体製造もオーストリアのマグナ=シュタイア。マグナはカナダ発祥で車体製造はもちろん工場設計までできちゃうメガサプライヤで、BMWは一部車種を丸投げしてます。今や彼らの傘下にあるのですが、シュタイア=プフ以来のグラーツの施設ではダイムラー傘下だった時代と同じようにGクラスの生産を請け負っているようです。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真12

今回はというか今回も3人で試乗というか移動してて、ただし前回と違ってクルマは1台きりで、そういえば俺、このクルマのリアシートにはついぞ座らないまま返却してしまいました。ホシガさん&しんちゃん先生のコメントの感じからすると、乗り心地はどうやら、前席ほど快適ではないような。はい。(森)

 

リアシートの作りはフロントに比べて一気に簡素になります。コンプライアンスを少なめにしているところは同じなのですが。驚くのは座面を持ち上げたとき。金属製のフロア部に凹みが掘ってあって、そこに単筒式ジャッキがぴたり収まっていて、しかもU字金具で固定されてる。溜息が出る偏執。ドイツだなあ。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真13

V8+ツインターボ。旧G63はエンジン排気量が5.5リッターでしたが、これは4.0リッター。でもパワーやトルクの額面は(もちろん)前よりすごいことになっております。乗った感じとしては、「とにかく速度の管理がすごいラク!!」でした。市街地でも高速道でも山坂道でも。ブレーキ関係もふくめて。その意味で、お行儀のいいクルマ。シツケがちゃんとできたクルマ。(森)

 

V8を過給する2基のターボチャージャーはVバンクの内側に押し込まれております。バンク間ツインターボには2種類あって、BMWなぞはMとそれ以外では使わい分けている。というのも排気管のレイアウトが……という話はここでは文字量が足りないので本編で。森さんの試乗記が配信されたあとにレポートを本編で書きます。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真01

右前輪。タイヤサイズは275/50R20で、これがスタンダード。車検証記載の前軸重量は1410kg。赤いキャリパーは固定タイプ(ディスクの両側でピストンのみが動くタイプ)。ブレーキペダルを踏み込んでいって最弱の制動Gを出して……のところのコントロールがやりやすかったのと、そこから先も、踏力に対する……(森)

 

タイヤはピレリのスコルピオーネ。オンロード重視のクロカン用タイヤとしてランボルギーニLM002用に開発された品物という記憶があります。バブルのときLM002を買ったオジサンが交換するとき4本で100万円越えて即死してましたな。その後、90年代にはサイズバリエーションを拡大してSUVにも使われるようになった。どの車輛でも押しなべて印象は良かったタイヤです。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真15

(承前)応答遅れやオーバーシュートの感じがなくて、つまりすごく扱いやすいブレーキでした。剛性感や高精度感もあって。あとそう、アクセルペダルを踏み込まないで発進したときの最低速度やわずかに踏み込んだところから離したときの速度の落ちの感じもちゃんとしておりました。そのへんも、速度の管理のしやすさの一部。タイヤサイズはフロントと同じ。後軸重量は1120kg。キャリパーはフツーのタイプ。(森)

 

などとよせばいいのに森さん相手にウンチクを披露しようとしたら、スコルピオーネのロゴの後ろにZeroの文字が。SUV版のP-Zeroとでも言いたいのかいお前さんはと呟いてたら、さらにその後ろにアンシメトリコと。P-Zeroならそうだよねーと思って後輪を見たらディッツオナーレじゃなくこっちもアンシメトリコでした。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真16

ハンドルを左へグイッときった状態で、左フロントのアシまわりを、車両フロント側から。この画像からわかるのは、①ダンパーがいわゆる別タンのタイプ(のしかもセミアクティブ)であることと②フロントの懸架方式が(ハイマウント・アッパーアームの)ダブルウィッシュボーンであることと、あとは③主バネが金属コイルであること、とかですか。(森)

 

別タンクつきのこのダンパーが主目的で森さんはGクラスに乗りたかったらしい。おれは前輪の切れ角のほうに注目。初代Gクラスはオフロード主眼だから思い切り純アッカーマンだった。かたや現行はパラレル。ただしキャスター角はベンツ乗用車群ほどは大きく採っていない模様でキャスターオフセットも無さそう。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真17

左フロントを内側下側より。このような画像を撮影できたのは、もちろんプロ用の設備があったから。お仕事中にすいませんでした。ほんとにありがとうございます。注目点は、ロワーアームのスパンのデカさ。この状態で下反角はしっかりと。それと、ステアリングがいわゆる前引きですね。ラジアルマウント前提の設計のキャリパーをこのクルマのアップライトにつけてるつけかたがちょっとおもしろい感じ。(森)

 

初めに別タンのことを聞いたときは懸架方式の変更による採用かと推測しました。ダブルウイッシュボーンにするとダンパー全長が長く採りにくくなるから、油室の容量を稼ぐためにそうしたのかと。そしたらハイアッパーアーム式でした。これならダンパー全長は長く採れます。ふうむ。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真18

左リアを車両後方側より。別タンのダンパー。リジッドアクスル。0人乗車状態ということで、パナールロッド(ラテラルロッド)は少しナナメっております。おそらく2人とか乗るとほぼ水平ぐらいになって、そこが日常的にいちばん使う想定のところ。というのは、基準位置から縮みまたは伸びのストロークが出たその出始めのところでの上屋の横揺れがほぼゼロになるので。(森)

 

リアは車軸懸架式のままです。車軸は上下を2本の前後方向アームで決めて、左右方向はパナールロッドで支えます。このパナールロッドが短いと、ピッチング時に上屋と車軸の相対的な位置関係に横ずれが起きます。軒並み後ろはリジッドだった70年代までの日本車をご存じの方なら記憶にあるだろうあの動きです。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真19

右リアを車両内側より。パナールロッドの車体側の取付点が見えますね。それと、細かいですがスタビの端っこ。このリアスタビを眺めながら「フロント用と較べて細っそいなー」とかいってたらプロの人は「いやいや……(笑)」で、要は絶対的には十分かなり太いそうです。リジッドアクスルでロール剛性をそれなりちゃんと確保するために、ということでしょうか。で、測ってもらったら直径24mm。フロントはΦ36mm。(森)

 

パナールロッドを呆け~っと見ていたら、後ろにいた国政久郎さんが「車軸側の取りつけは左ですね」と。あ! 日本車のやつはどれも右だった。「左ハンドルだからでしょうかね」。それは考えたこともなかった。ひたすら恐れ入りました。(沢村)


メルセデスAMG G63 写真20

右リアのダンパー。ケーブルが刺さってるところが2箇所。そのへんをよく見ると、ダンパー本体側にそれぞれ「R」と「C」。フツーに考えて、ReboundのRとCompressionのCですよね。てことは、セミアクティブはセミアクティブでも伸び圧とが独立なのをそれぞれに制御……なのかなーと。そう思ってフロントのダンパーの写真をあらためて眺めると、ケーブルが刺さってるのは1箇所のみ……だよなあ。んー。(森)

 

車軸懸架式の場合は、アップライトの後輪中心よりも後ろ側にダンパーの下端を取りつけるのが常道です。突起乗り越え時に車軸は僅かに前転りしながら斜め前方に跳ね上げられますから、ダンパーもそれに合わせて前傾させます。しかし、G63のやつは内側にかなり大きく倒れてる。オバフェンで外に突き出した後輪に対してフレームが狭いためでしょうが……。(沢村)